文学フリマ東京38販売物一覧

イベント情報,同人誌

5/19(日)東京流通センターで開催される『文学フリマ東京38』の販売物についての記事です。
文フリは頒布じゃないんですよね。いつも一回頒布って打っちゃって直してますけど。

あらすじや価格など基本情報での宣伝は他でもしているので、ここではそれにプラスして解説? 補足? のようなものをつけたいと思っています。
既読の方にもお楽しみいただけたら幸いです。

書影一覧(触ると拡大できます)

チューベローズの夢死

A5二段組/174P/1000円

待っているわ 踊っているわ あの亡骸と同じ夜に

風薫る五月、少女は死に、少年は生き残った。

青春サスペンス「壮花(わかきはな)シリーズ」総集編。
合同誌『The Flowers』収録「チューベローズ」、続編『ヘルマプロディートスの縊死』に加え、無料ペーパーやWebで公開した短編、未公開原稿などを一冊にまとめた決定版。
さぁ貴方も、美少女男子高校生や連続猟奇殺人鬼と、忘れられないダンスをともに――。
痛みを食らい、血を流す覚悟が、おありなら。


主人公の小春野薫(こはるのかおる)は美少女男子高校生。
どうしても叶えたい目的があり、手段として女性の服を着ています。
その目的たる幼なじみも、薫の異性装を許容してはいますができればやめさせたいと思っています。
親も教師も異性装をやめるよう薫に圧をかけますし、友人たちも別に薫の服装はどうでもいい。
本人を含めて、薫が異性装をすることを望んでいる人間は誰一人いないのです。
それでも薫は女性を装います。来る日も来る日も。終わりのわからない毎日を、自分の理想とは違うものとして生きてきました。属性や程度は違えど、多くの人がそうであるように。
すがり続けたチューベローズが砕けるとき、薫がどう変わっていくのか、どうか見届けてください。

皆紅

文庫/230P/1000円

死に取り憑かれ、日常に憧れた、ふたりぼっちの物語。

長期にわたる鬱で希望を失った雅伸は、別の理由で死にたい女に誘われ、ともに最期を迎えるための生活を始める。
新居を選び、食卓を囲み、籍を入れ、雨の日は同じ傘に入り、ひとつの寝床で眠りに就く…… 初めて手にした安らぎは全て、約束の夜に潰えるための仮初――。
黒い渇望が赤色に染まり切った、その先のことはまだ誰も知らない。

生きることも死ぬことも、いずれも幸福であり残酷です。
この物語はハッピーエンド。だからといって全ての理想が叶うわけではありません。
誰かを殺そうとしたなら必ず代価は支払わなければなりません。
情状酌量があっても。相手が望んでいたことであっても。それが自分自身であっても。一切の例外なく。
報われながら報いを受けるのが、きっと人生というものなのでしょう。

紺碧つらぬけ

文庫/126P/600円

身体が欠けても、 希望が欠けても、 空ぐらいなら裂いてやる。

森貞竜光は、二十一歳にして大切なものを二つ失くした。
理想の家庭を築く夢。左手の親指の先。 目指していた者にも、完璧な者にももうなれない。
絶望すらも通り過ぎ、ただ漫然と日々を消費する。
このまま妻を愛して二人で生きていけたらそれでいい。 俺の人生は、もうそれだけで。

そんなとき、恩師に渡された「左利き用のキャッチャーミット」。
後輩と再びバッテリーを組み、逆の手を使って野球をして……。
いつしか、その『無意味』に竜光の心は弾んでいた。

既婚社会人が駆け抜ける、周回遅れの青春ストーリー。
自己愛混じりの感傷はもういらない。
白球よ、頭上を覆うこの紺碧をつらぬけ。

内容的には全くつながりはありませんが、実はテーマとして『皆紅』と『紺碧つらぬけ』は対になる話です。
「精神×死×赤」「身体×生×青」。相模と森貞、高校のクラスメイトで部活も一緒、同じ場所から進み出たはずなのに全く違う人生を歩みました。
ときどき「なんでわざわざそういう(障害者や性的マイノリティなど)扱いの難しいものばかりを書くのか」と問われることがあります。なんでと言われてもという話ではあるのですが。
「シスジェンダーで、異性愛者で、家庭環境に問題がなく、先天的あるいは後天的な持病や障害がなく、友人との関係が健全で、アイデンティティクライシスを経験したことがない」人を書く方が、私にとっては「わざわざ」頑張らないといけないから……という辺りで少し、ご容赦いただけないでしょうか。

恋に向かない男たち

B6/146P/800円

共に歩み、救い、堕とし、捧げ、憎み、祈る。 青年たちの非恋愛相互執着短編集。

大学が別々になる前に、幼なじみと卒業旅行へ行く青年。
自分の恋が叶う瞬間、病弱な親友を振り返ってしまう大学生。
忘れえぬ記憶を刻み込んでおきながら、相手を忘却する男。
未来のためと嘯いて、己の為に憎しみを請け負った少年。
本音で斬りつけ合うことを、誠実と腹落ちし笑った連中。
五組の男たちの、献身的で、自罰的で、傲慢で、独善的で、 純然たる相手への感情――。

愛でもなく、恋でもなく、友情と呼ぶにはどうやら重い。
ただ心から相手を想いたいだけの短編集。

君よ、生きてくれ。俺のせいで、僕のために。

前回の新刊。
特に補足するような難しいことはないです。男と男の巨大感情! どーん! ばーん!! 以上!! みたいなシンプルな本です。
青くさい大モメをしていた総志と太陽が、それぞれ『皆紅』『紺碧つらぬけ』で頼れる大人ポジとして出てくるのは感慨深いですね。
壮花シリーズも『チューベローズの夢死』で閉幕ではありますが、高田は気に入っているのでまたクレイジーな話で出したいところです。

赤を囲う

文庫/156P/700円

その日、兄が飛び降りた。理由は知らない。

登校拒否の女子高生が、兄の自殺未遂をきっかけに外へ出ていく『眼下の緑』。
プロポーズ四連敗中の新米警察官が、原因を探して奔走する『祈りは純白』。
スランプの作家が、ファンを名乗る有名人に家まで押しかけられる『桜色ポラリス』。
生まれつき茶髪の教師が、職員間いじめに巻き込まれていく『青い教室』。
二十九歳無職の青年が、見知らぬ女に心中を持ちかけられる『赤を囲う』。

感性。出生。性愛。外見。疾病。「普通」でないから「世間」から隔たれるのか。
自問し続ける人たちが、自分の色と在り様を見つけていく短編集。

今回は文フリ初販売の『皆紅』に絡めての語りとさせていただきます。
雅伸と未紅の経緯を追うだけなら『皆紅』で充分なのですが、同じ出来事を描いていても
・フィナーレのポジティブさを感じさせる『赤を囲う』表題作「赤を囲う」
・プロローグとしての不穏さをはらんだ『皆紅』版「赤を囲う」
二本並べて見比べていただくのも面白いのではないかなと思います。
結構違いがあるはずですが、台詞はほぼ変えていません(字数の兼ね合いで印象を変えない程度にはいじったかも、そういうレベルの誤差)。
天空交差点の作品は基本的に並行世界がない一本道進行なので、解釈である地の文の色が変わっていても、誰が何を言った・やったという事実ベースで見たときには矛盾がないようになっています。
古い短編で設定が固まってなくて現行と違う……みたいなことはありますが、同人誌レベルのまとまった作品ができるとそこで固定化されるイメージです。

『文学フリマ東京38』は5/19(日)開催です。
今回は東京流通センターの第一展示場と第二展示場の両方使うんですが、
氷上は【第一展示場】の【C-9】【天空交差点】におります。

外周側なので見つけやすいかも。
見本誌を自由に読めるコーナーや、第一展示場には休憩室・第二展示場にはコーヒーの販売スペースなどもあり、その気になれば一日中遊べそうですね。
C-9 天空交差点でお待ちしております。

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